声楽の道からTVディレクターへ

声楽の道からTVディレクターへ

漆畑 萌里(URUSHIBATA Moeri)さん

放送ディレクター/声楽家

〇プロフィール

東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。
第69回全日本学生音楽コンクール声楽部門高校の部東京本選3位、全国大会入選。
第9回東京国際声楽コンクール高校生部門準優勝。
ミュージカル演出を東京芸術劇場、練馬文化センターにて上演。
現在は音楽番組制作に携わっている。

〇現在、何をしていますか?

放送会社で音楽番組のディレクターをしています。

ディレクターはいわば何でも屋さん。企画立案から、キャスティング、演出、現場での指示出しなど、番組ができるまでのすべての過程を見守ります。放送当日が近くなると、どういう動線でアーティストを招くか、演出はどうするか、画角はどうするか、出演者にどんなことを 話してもらうかなども具体的に決めていきます。

まだ入ったばかりなので、現場で信頼されるフロアディレクターになれるよう日々頑張っています。

〇歌を始めたきっかけを教えてください。

小3の時に当時習い事で通っていた音楽教室が開催のこどもオペラに参加しました。その時、舞台に出演する喜びややりがい感じ、小4から声楽を始めました。こどもオペラにも小3・小6・中3と連続して出演しました。

中3で出演したこどもオペラの本番、役を演じた際に客席のお客様が笑顔になっている様子を見て、

歌で人をもっと喜ばせたい、音楽をより専門的に勉強したい

と思ったのです。そこで、藝大受験を決めました。

大学では、全国から集まってきた芸大生のレベルの高さや勉強へのモチベーションに、多くの刺激を受けました。

〇なぜ今のお仕事に?

大学3年生の秋ごろまでは、プレイヤー(演奏家)になりたいと考えていました。

しかし、大学に入ってすぐに、コンサートで満席にすることの難しさや、演奏家のみで生計を立てることの厳しさに気づいてもいました。また、日本の文化的な水準を上げるためには、演奏家の研鑚だけでなく、

より多くの人に芸術の魅力を伝える企画を作ることや、芸術で生計を立てられる人を増やすための制度を充実させること

も必要ではないかと考えました。

そこで、プレイヤーだけではなく、企画の立案から制作までのプロセスを知ろうと、とにかくいろんな企画に関わり自分の適性を見極めました。音楽から離れてプログラミングやWebマーケティングの勉強に挑戦したこともありました。

結果、一人で歌の技術を磨くよりも人と協力して音楽に関わる仕事をして、

芸術家がより豊かに自己表現を続けていけるための土台作りや企画者として、音楽の発信に携わりたい

と考えるようになりました。

就職する際には企業理念と価値観がより合っている会社を検討しました。音楽系の制作といっても、レコード会社や舞台、映画、テレビなど媒体の数だけ選択肢がありますが、今の会社は興味のある企画に制作として深く携われることに魅力を感じたので、志望しました。

〇キャリア選択を振り返って思うことがあれば教えてください。

音楽業界の中で、どの役割で活動するのが、業界にとっても自分にとっても最善なのか、考えることを意識していました。

プレイヤーになって芸術を深める人になるのか、より多くの人に音楽の魅力を知ってもらえるような企画を考える人になるのか、先生になって学校で音楽を教えるのか…
音楽の世界で働くといっても選択は様々です。

自分のポテンシャルと、指向性を見極めるためにどんなことでも行動に移すことが大事だと思います。私は、より門戸を開いて音楽の魅力を伝えられる人になりたいと思ったので、この選択をしてよかったです。

〇今後について考えることを教えてください。

私の中で、舞台が好きというのは揺るがない事実です。今携わっている音楽番組では、舞台監督とメインの演出を経験してみたいと思っています。

転勤もあるので、例えば沖縄の琉球音楽のような地域に伝わる伝統音楽を知り、その地域での音楽の届け方なども考えていきたいです。

将来的には、舞台芸術に興味を持っていただけるような番組や、舞台企画をしてみたいです。