粘り強く続けて見えた、演奏を通した社会貢献

粘り強く続けて見えた、演奏を通した社会貢献

新野 将之(NINO Masayuki)さん

打楽器奏者/アウトリーチ

プロフィール

昭和64年生まれ。埼玉県出身。15歳の時に打楽器と出会う。

国立音楽大学打楽器科を首席で卒業し、矢田部賞を受賞。読売新人演奏会に出演。
イタリア国際打楽器コンクール、JEJU国際金管打楽器コンクール、日本国際打楽器コンクールの全てにおいて最高位を受賞。その他にも受賞暦多数。

Black Swamp Percussion社・Thunderbolt percussion社エンドーサーアーティスト。東京コンサーツ所属アーティスト。地域創造公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト(おんかつアーティスト)。その他、各種協演や、アンサンブルグループ活動、ソロCDのリリース、ソロリサイタルなど、数多くの舞台で活躍している。

大学を卒業してから、どのように活動を展開したのでしょうか?

大学卒業した辺りは仕事がなくて、いろんなバイトを掛け持ちして練習してっていう生活が、26、27歳くらいまで続いていました。

関わる演奏会は全部自主企画で、ホールを予約して雑務も一人でこなしてやっていました。友達とグループを組んで企画して、客席はみんな身内だったりしました。

コンクールでは引っ掛かることも多くて技術的なものは身に付いてきていたと思いますが、全然仕事には結びつきませんでした。なんで実力があるのに仕事が来ないんだろうって思っていました。

そんな時、バイト先にベンチャー会社の社長みたいな人が来て、「一銭にもならないなんて、誰にも貢献できていないってことだよ」と言われたんです。そこから、自分の技術をどうやって社会に還元していけばいいんだろう、という発想に切り替わりました。

なぜ今のお仕事に?

地域創造というのを見つけて、おんかつというアウトリーチプログラムのオーディションを受けてみました。それがぼくの第一歩でした。

それまで仕事と言うと、依頼されて引き受けて行くというイメージだったんですけれども、アウトリーチでは現地の先生や担当の方と話し合って、プログラムを作っていけます。

それはかなりボクに向いていて、「自分のやってきたことが社会に還元されているなあ」と感じられて、やりがいがあります。

最近では、アウトリーチにはまりすぎて、本当のリサイタルの時に、バランス感覚で悩むこともあります(笑)分かりやすくするとエンタメの方向に寄っていきやすいですが、主軸はアートでありたいなと思っているので、そのバランスを保つのが難しいところですね。

やりたいことと社会が求めていることの重なる点を見つけるのがアウトリーチなんだと思います。すごい前衛的なパフォーマンスでも、じゃあこれを、一般の子供たちにどう見せようかと考えるのは大事です。

将来的にギャラリーやホールに来てくれる子がいるかもしれない種をまきながら、自分のしている音楽が、どう社会で重要かを落とし込めたらいいんじゃないかなと思います。

※おんかつ…市町村等の公共ホールに、演奏家とコーディネーターを派遣し、コンサートとアクティビティ、演奏交流プログラムを実施する事業。

活動が広がり始めたきっかけ

少しずつ少しずつ、「あのコンサート聞いたよ」とお声がけ頂いたりして、広がっていったように思います。すぐには結果にはならないので、ネチネチと「ここにいるよ」とやらないと認知されないです。

自分の場合、自費で、エンジニアさんに持ち込みでCDを出させてもらったことが、一つのきっかけにはなりました。

レコード芸術史という雑誌でいい評価を頂いて、ラジオのお話を頂いたりとか、
CDを名刺代わりにあげたら、聴いてくれた人がコンサートを依頼してくれたりとか…
そうして覚えてもらうことで、活動が広がりました。

その後、おんかつアーティストにもなって、方向性が見え出しました。
今では、事務所に所属しており、事務所が仕事を持って来てくれたり、自分のところへ依頼が着たり、仕事の形態は様々です。

多い時は毎週違うコンサートに出ていたりします。金銭面的にも、やっと生活できるくらいまで来たな、と感じています。

今後について考えることを教えてください。

海外公演を増やしていきたいです。実はオファーを頂けそうだったところに、コロナ禍になり、なくなってしまったのです。

自分の活動として、教育や文化を広めていくという主軸と、アーティストとして国際的にやっていきたいという両方の側面があります。演奏を通して社会に貢献していきながら、活動をどっちにも伸ばしていきたいというのが、これからの展望です。

キャリアを振り返って、後輩たちに伝えたいことを教えてください。

いろんなキャリアの形があるから一概にこれがいいとは言えないけど、一つ言えるのはやめないことですね。10年続けたらきっと何かになると思うけど、それまでに見切りをつけてしまう人が多いと思います。

続けてさえいれば、意欲的な活動であればなんでもプラスに働くと思います。
生活との両立が難しいですね。そこを何とかする方法を見つけられるといいです。一回就職してお金をためてから活動を始めるというのも選択肢としてありだと思います。

大学卒業後、先が見えない不安があるから大学院に言ったり留学したり、社会に出るのを先延ばしにしたり、いろいろな選択肢があると思います。
何をするにしても、社会に出たときに何ができるか考えたときに、実力を身に付けておくとか、何かしらの方向性を持っておくことは大切なんじゃないかな、と思います。
いろんなものに触れて、何が向いているかを考えて、最終的に自分の適性を見定めてやっていくのがいいんじゃないかな、と。